第4記事では、使っていない特許権について「売却する」という選択肢を取り上げました。
しかし、特許権を他社に活用してもらう方法は、売却だけではありません。
自社で特許権を保有したまま、他社にその技術を利用してもらう。
ライセンスという選択肢があります。
自社では十分に活用できていない技術でも、他社の製品や販売網、事業と組み合わせることで、新たな収益につながる可能性があります。
では、そのとき、
「いくらで使ってもらうのか」
をどう考えればよいのでしょうか。
売却とライセンスは何が違う?
まず、基本的な違いを整理します。
特許権を売却すれば、原則としてその特許権そのものを相手に譲渡します。
一方、ライセンスでは、特許権を保有したまま、一定の条件で相手に利用を認めます。
そのため、
「特許権を手放したくはない」
「自社でも引き続き利用したい」
「複数の会社に技術を利用してもらいたい」
といった場合には、売却ではなくライセンスが選択肢になることがあります。
特許権を、
「保有するか、売るか」だけではなく、「保有しながら活用する」
という考え方です。
ライセンスをすると、どのように収益になる?
ライセンスでは、特許権を利用する対価としてライセンス料を受け取ります。
例えば、
契約時に一定額を受け取る。
売上などに応じて継続的にロイヤルティを受け取る。
これらを組み合わせる。
といった形が考えられます。
実際の条件は、対象となる技術や事業、当事者間の交渉などによってさまざまです。
そこで問題になるのが、
「その特許権を使う対価として、いくらが妥当なのか」
ということです。
「ロイヤルティは何%が普通?」では決められない
ライセンスを検討すると、
「ロイヤルティ率は何%くらいが普通ですか?」
という疑問が出てきます。
確かに、類似するライセンス契約や業界の情報が参考になることはあります。
しかし、
「特許のライセンスなら○%」
と一律に決められるものではありません。
同じ技術分野でも、
その特許権が製品にとってどの程度重要なのか。
代替できる技術があるのか。
どの程度の市場が見込まれるのか。
ライセンスを受ける会社が、その技術によってどのような経済的利益を得られるのか。
契約でどこまでの利用を認めるのか。
などによって、条件は変わります。
したがって、一般的な料率だけを見るのではなく、対象となる特許権と事業との関係を考える必要があります。
特許権の価値とライセンス料は同じではない
ここは、第4記事で取り上げた売却価格との関係にも似ています。
例えば、ある特許権の価値評価を行い、
「5,000万円」
という評価額になったとします。
だからといって、
「ライセンス料も5,000万円」
になるわけではありません。
特許権そのものの価値と、その特許権を一定の条件で利用する対価は別のものです。
ライセンスの範囲。
期間。
対象となる製品や地域。
契約条件。
相手方の事業。
などによっても、ライセンスの経済的な意味は変わります。
評価額は、ライセンス料を自動的に決める答えではなく、ライセンス条件を検討するための一つの材料になります。
ライセンスする側だけの問題ではない
価値を考える必要があるのは、特許権を持っている側だけではありません。
ライセンスを受ける会社にとっても、
「この技術を使うことで、どの程度の利益が期待できるのか」
「自社で別の技術を開発する場合と比べてどうなのか」
「このライセンス料を支払ってでも利用する意味があるのか」
という判断が必要になります。
つまり、ライセンス交渉では、
特許権者には、
「いくらで使わせるのか」
という問題があり、
ライセンスを受ける側には、
「いくらまでなら支払えるのか」
という問題があります。
双方が同じ金額を考えるとは限りません。
だからこそ、交渉の出発点となる根拠が重要になります。
使っていない特許権が、収益を生む可能性もある
自社では使っていない特許権について、
そのまま保有する。
維持を終了する。
売却する。
という選択肢だけでなく、
他社にライセンスして活用する
という方法もあります。
特に、自社にはその技術を事業化するための設備や販売網がなくても、それを持っている他社と組み合わせれば、技術が事業につながる可能性があります。
一方で、ライセンスすれば必ず収益になるわけではありません。
相手企業を見つける必要もありますし、契約条件の検討も必要です。
また、自社の事業や将来戦略との関係も考えなければなりません。
重要なのは、
「この特許権を持っている」から一歩進んで、「どう活用するのか」を考えることです。
「この特許、いくら?」から「いくらで使ってもらう?」へ
特許権価値評価では、
「この特許権はいくらなのか」
を考えます。
ライセンスを検討すると、その問いが、
「この特許権を、いくらで使ってもらうのか」
という具体的な問題につながります。
その答えも、唯一の数字が最初から決まっているわけではありません。
対象となる特許権、事業、市場、契約条件などを踏まえて検討し、交渉していくことになります。
売却する。
ライセンスする。
自社で使い続ける。
特許権の価値を考えることは、単に金額を知るためだけではなく、その特許権をこれからどう活用するかを考えることにもつながります。