物語で学ぶ・全15話

ストーリーで学ぶ 知財担当者のためのファイナンス

知財部が「企業価値を高めろ」と言われたら

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若手知財担当者が、社内の具体的な課題を通じて会計・ファイナンスを学んでいく、全15話・4部構成の物語です。技術や特許への理解を、事業と数字をつなぎ、経営へ提案する力へと広げていきます。

本連載の企業・人物・案件は、説明のために設定した架空のものです。特定の実在企業や人物を示すものではありません。

物語の舞台

物語の舞台は、産業機器や機能性素材を開発・製造する中堅上場メーカー「東洋テクノ株式会社」です。

売上高は約500億円。国内市場の成熟によって成長が鈍化する一方、毎年多額の研究開発費を投じ、国内外に約400件の特許を保有しています。

株主から、無形資産や研究開発投資が将来の収益と企業価値へどのようにつながっているのかを問われたことをきっかけに、新規事業、M&A、保有特許の活用に向き合うことになります。

主な登場人物

主人公

高橋悠真

29歳。理工系大学院を修了後、材料開発部で4年間勤務し、知財部へ異動して2年目。技術と開発現場は分かりますが、会計・財務はほぼ未経験です。

「よい技術や強い特許には、当然価値がある」と考えていましたが、社長から「知財で企業価値を高めろ」という宿題を与えられ、事業と数字の関係を一から学び始めます。

知財部長

黒田達也

52歳。弁理士資格を持ち、知財一筋で歩んできた知財部長です。権利化、係争対応、クリアランスには強い一方、決算書や企業価値には自信がありません。

社長から突然届いた指示に困惑しながらも、高橋と一緒に答えを探します。数字だけでは捉えきれない権利範囲、代替技術、法的保護の重要性を知る、知財の専門家です。

社長

大森哲夫

58歳。営業畑出身の社長です。顧客、売上、利益には敏感ですが、知財とファイナンスの詳しい仕組みまでは分かっていません。

経済誌の無形資産特集を読んだ直後、投資家から知財と将来収益の関係を問われ、知財部へ「知財で企業価値を高めろ」という大きな課題を投げかけます。

経理部員

森田美咲

28歳。高橋より1歳下ですが、同じ年度に入社した同期です。大学では商学部に学び、公認会計士試験に挑戦するため卒業を1年遅らせました。合格には届かなかったものの、その過程で会計やファイナンス、企業価値評価の基礎を身につけています。

入社以来、経理部で月次決算、予算管理、事業部損益を担当しています。高橋が会計や会社の数字について、遠慮なく質問できる相手です。

経営企画部員

神谷亮介

35歳。外資系コンサルティング会社を経て中途入社した、海外MBA取得者です。DCF、WACC、ROIC、PPAなどに詳しく、経営企画部でM&Aと事業ポートフォリオを担当しています。

知財部を専門作業の下請けと見ており、「知財の皆さんは、M&Aや企業価値までは分からないでしょう。特許だけ調べてもらえれば結構です」と高橋を退けます。

A事業部 事業企画課長

佐々木健司

36歳。大阪府出身。営業部門で実績を上げ、若くしてA事業部の事業企画課長へ昇進した、関西弁を話す事業部の出世頭です。A事業の顧客、製品、価格、粗利、収益構造を把握し、知財活用案件では事業側の主要メンバーになります。

高橋とは社内のフットサルサークルで数年前から一緒にプレーしており、部署を越えて気軽に相談できる間柄です。「これを使うたら、誰が、なんぼ払うてくれるんや」と、技術の説明を商売の話へ引き戻します。個別案件の収益化には強い一方、目の前の成果を優先し、将来の事業や競争関係を見落とすことがあります。

全15話の構成

第1部 社長からの宿題(会計・企業価値の基礎編)

  1. 第1話
    「知財で企業価値を高めろ」――社長から突然届いた宿題

    特許件数と企業価値の違い、知財担当者が会計・ファイナンスを学ぶ理由。

    公開中
  2. 第2話
    利益と現金は、なぜ同じにならない?

    貸借対照表、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書のつながり、利益とキャッシュの違い。

    公開中
  3. 第3話
    研究開発費を使った分だけ、技術の価値は上がるのか

    研究開発費、無形資産、原価と経済的価値、埋没原価。

    公開中
  4. 第4話
    強い特許を持つ事業は、本当に儲かっているのか

    売上、利益率、投下資本、ROIC、特許の強さと事業収益性。

    公開中

第2部 M&A案件を見極める(知財DD・事業価値評価編)

  1. 第5話
    「特許だけ調べてください」

    M&Aにおける知財調査、知財デューデリジェンス、権利の有無と事業価値の違い。

    公開中
  2. 第6話
    買収価格は、どうやって決まるのか

    企業価値、事業価値、株式価値、買収価格と評価額。

    公開中
  3. 第7話
    5年後の売上を、どう信じるのか

    DCF、将来キャッシュ・フロー、事業計画と知財、前提検証。

    公開中
  4. 第8話
    技術はよい。それでも価値が低くなるのはなぜか

    お金の時間価値、割引率、技術リスク、事業リスク、シナリオ分析。

    公開中
  5. 第9話
    第9話 特許の問題でDCFが変わった

    知財情報による事業計画の修正、経営企画と知財の協働、PPAの入口。

    公開中

第3部 特許を売るか、貸すか(特許取引・ライセンス編)

  1. 第10話
    第10話 買いたい会社が現れた。この特許、いくらで売る?

    開発費と現在価値、原価と取引価格、評価基準日。

    公開中
  2. 第11話
    第11話 売るか、貸すか、それとも持ち続けるか

    売却、ライセンス、料率、原価法、マーケット法、インカム法、機会費用。

    公開中
  3. 第12話
    第12話 独占で貸すと、売るのと同じ?

    独占ライセンスの範囲、販売開始期限、最低保証額など、将来の利益とリスクを分ける契約条件。

    公開中

第4部 社長への回答(知財戦略・企業価値編)

  1. 第13話
    第13話 その特許は、会社の成長にどうつながる?

    特許を事業計画、競争優位、将来キャッシュ・フローへ結び付け、企業価値への影響を整理する。

    公開中
  2. 第14話
    第14話 知財部の成果を、何で測る?

    件数だけに依存せず、事業への貢献と財務への影響から知財部の成果を測る方法。

    公開中
  3. 第15話
    第15話 知財で企業価値を高めるとは、どういうことか?

    知財を経営判断と資源配分へ組み込み、企業価値を高める知財経営を連載全体から整理する。

    公開中

第1話から読む

「知財で企業価値を高めろ」――社長から突然届いた宿題

この連載を、知財ファイナンス研修の事前教材として使用しています

当研究所の研修では、テーマに対応する話を事前に読み、印象に残った場面、分かりにくかった点、自社との共通点などを提出していただきます。

研修当日は、必要な知識を解説したうえで、架空事例または研修先企業の数字を使った演習とディスカッションを行います。

研修は知財担当者を主な対象としていますが、知財と事業・財務の関係を学びたい方であれば、所属部門を問わず参加できます。

特許権価値評価の個別テーマは、特許権価値評価コラムでも解説しています。